インクと爪跡

不器用にあつめた刹那の花束

2021-04-01から1ヶ月間の記事一覧

短編「その目に映る」

その目に映る 汽笛がけたたましく耳を劈き、衝撃に驚いて覚醒した。自然体な流れで車窓の下に溢した視線が、肥った腕を振り回す少女の横顔をとらえる。嗚呼、成る程。と、江見は思い、発作的な感情を忘れた。読みかけだった文庫本を鞄に仕舞い、あの気怠げな…