インクと爪跡

不器用にあつめた刹那の花束

2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

短編「記憶」

記憶 すくい上げた一杯の水は、指の隙間から残らずこぼれ落ちて水面という景色に戻った。手のひらはすぐに乾いて、震え、しかし此処に置いて行かれたという虚しさはない。あれは、自分にとって特別な存在ではなかった。偶然に触れ合って、すれ違った。三野は…