インクと爪跡

不器用にあつめた刹那の花束

2020-01-01から1年間の記事一覧

短編「勾配」

短編「勾配」 途中、まだ灯りのついている小さなたこ焼きの店に寄って道を聞いた。やはり線路を伝って駅を左に曲がり、すぐに道路を渡って左へ、それから住宅街に入っていくと言う。観光案内所と大きく書かれた看板の、古い建物が目印だと店先の女は東に言い…

【ご依頼作品】短編「左手」

ご依頼作品です。許可をいただきましたので、公開いたします。 この度はありがとうございました。テーマは「親子」です。 短編「左手」 左利きかもしれない。何度目かの把握反射に、隆之は直感的にそう思った。まだ、何かを持ったり、遊んだりすることはでき…

【ご依頼作品】短編「感触」

ご依頼作品です。許可を頂きましたので公開します。 テーマは「会話」です。この度はありがとうございました。 短編「感触」 死に際までの幾星霜。呼吸が止まる少し前。たとえば目を閉じ俯いたまま「それ取って」と言って、醤油のびんや、箱に入ったお菓子や…