インクと爪跡

不器用にあつめた刹那の花束

2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

短編「比喩」

比喩 大地図をなぞり峻険に聳え立った想像よりも、だいぶ平坦な地が広がっていた。駅舎から急坂を降れば田園が土壌の滑らかな色を明瞭に、きよい空に晒されている。視界いっぱいに、自然の鮮烈な生肌。諒太は肩から落ちそうなリュック・サックを背負い直し、…