インクと爪跡

不器用にあつめた刹那の花束

2021-02-15から1日間の記事一覧

短編「目糞」

短編「目糞」 駐車場から坂の上を振り向けば、連なる山々には煙雨が立っている。雲の流れに沿ってひだ状に濃淡を織りなす自然の陰影は、明るさがなくともくっきり見える。頂は薄暗く、すべり落ちるほど鮮やかに爛れる。ジャンパーのポケットに片手を突っ込み…