インクと爪跡

不器用にあつめた刹那の花束

着こみ過ぎた服はいつの間にか全て脱げていて、僕は裸になっていた。夜更けのことであったが、月がどのような形をしていて、静寂がどのように浮遊していて、愛する者がどのような表情をしていたのか知らない。服は本当に、一枚ずつ脱いだのではなく、また引き裂かれたのでもなく、襟袖整ったまま足元にあった。大量だったが、それはあくまでも重さだけが事実として残っていた。僕は寒いのでとりあえず新しい下着を着て、今まで過ごしている。文房具屋で新しい紙とえんぴつを購入しようと思う。それくらいのお金はあって、無くなったら働けばいいと考えている。